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いきなり衣服をつかんで引きずり込み、強引に… 光源氏による衝撃的な「強姦」エピソード 今なら「不同意性交等罪」レベルの所業とは?

日本史あやしい話

 

■光源氏と朧月夜にはモデルがいた?

 

 ちなみに、光源氏と朧月夜の境遇は、実在の人物を想起させる。同じような境遇のもとにあった男女として、在原業平と藤原高子を思い浮かべてしまうのだ。果たして、紫式部は彼らをモデルにして描いたのか、この辺りも少し検証していこう。

 

 まずは在原業平に目を向けてみよう。いうまでもなく、『伊勢物語』にもその奔放な女性遍歴が数限りなく描かれた、稀代のプレーボーイである。容貌は「体貌閑麗(たいぼうかんれい)」だったというから、とびっきりのイケメンだったのだろう。

 

 ただし、その境遇は、必ずしも平穏なものではなかった。父・阿保親王は「薬子の変」に連座して九州へ左遷。その息子である業平自身も、兄と共に臣籍降下して難を逃れたようだ。その不遇さは、女御の中で最も位が低い母を持つ、光源氏にも通じるものがありそう。母の位階の低さがたたって、皇位を継げなかったからである。

 

 さらに、イケメンでプレーボーイというのも一緒。光源氏の前半生のモデルのひとりが業平である可能性は高そうだ。

 

 では、物語の中の朧月夜と実在の藤原高子の類似点はどうだろうか? 朧月夜はもともと、東宮の女御として入内するはずだったものの、光源氏との密通が知られたことで一時中断。それでも、遅ればせながらも朱雀帝に寵愛されたようである。

 

 これらの状況を実在の藤原高子に当てはめてみると、驚くほどに通っている。高子も皇太子妃となるところを、業平との密愛が発覚したことで入内が取りやめになったということがあったのだ。

 

 また、史実かどうかは疑念があるものの、『伊勢物語』の記述を業平のものと信じれば、二人の関係を知った帝の命によって、とうとう業平も流罪の憂き目となったというから、その境遇は光源氏と同じである。

 

 さらに、朧月夜の父は右大臣を経て太政大臣となっているが、高子の父も、死後の追贈ではあるものの、同じ太政大臣に処せられている。物語の中の右大臣が朱雀帝の外祖父で、高子の父が陽成天皇の外祖父であったという境遇までもがピタリと一致するのだ。

 

 このように重なるところの多い、朧月夜・光源氏と、実在の藤原高子・在原業平。紫式部が彼らをモデルにした可能性は高いかもしれない。

 

 

 

 

 

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藤井勝彦ふじい かつひこ

1955年大阪生まれ。歴史紀行作家・写真家。『日本神話の迷宮』『日本神話の謎を歩く』(天夢人)、『邪馬台国』『三国志合戰事典』『図解三国志』『図解ダーティヒロイン』(新紀元社)、『神々が宿る絶景100』(宝島社)、『写真で見る三国志』『世界遺産 富士山を行く!』『世界の国ぐに ビジュアル事典』(メイツ出版)、『中国の世界遺産』(JTBパブリッシング)など、日本および中国の古代史関連等の書籍を多数出版している。

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